あなたの行く道に。 |
こう、交差する道があるとして、ですね。 突然語り出した記者に、おやじさんと呼ばれて親しまれている初老の男は首を傾げた。 いくつかの道の中には、自分の望む道があったり、栄光への道がある。 おやじさんは、苦笑した。 さすがにブンヤさんというのは、表現が詩的だね。 すいません、わかりずらいですよね。 詩的と言われて己が少しばかり、感傷的だったことに気づいて、ジュネットは頭をかいた。 まっすぐ歩める人間なんて、いないだろうね。 そしてそれから、やはり笑った。 何を考えてそんな疑問が出たのか、興味があるな。 ああ…いえ、ハミルトン大尉…今は少佐でしたっけ。彼に私はずいぶん親切にされたものです。守備兵に取り上げられたカメラを取り返してくれたのは彼でしたし、開戦と同時に私に特務員としての仕事をまわすように手配してくれたりもした。 他人から見た自分が平面だったら、さぞつまらないだろうねぇ。私はそれでいいと思うが? あのサンド島、狭くて美しい島で、スパイと呼ばれて追い詰められた。物陰に息をひそめ、ウォードッグ隊のパイロット達と行動を共にした。 ―――なんのために? 答えはなんだっただろう。どんな答えが、彼の口から聞けただろうか。 おや、いいところに来たね。 おやじさんがそう声をかけたのは、今やラーズグリーズと呼ばれる編隊のリーダーであるブレイズだった。彼は首を傾げている。 今ね、ジュネットと面白い話をしていた。キミから見て、たとえば彼はどんな風に見えるのかな? 尋ねられて、ブレイズは少し困ったように視線を泳がせた。 言いたまえ、新しい視野が開けるかもしれんぞ? ああ…えーっと。 それでも少し困ったように、ブレイズはうなっていた。 えーっと…女好きですよね… …オチがこれですか。 上等なオチだろう。 ああそうですね。くだらない話だってことだ。 |