性病部隊
(園田光慶/小池一夫)

強烈なタイトルが目を引くエロ劇画の傑作。
「THE ENDからの逃亡」と前書きがつけられ「性病部隊」「夕陽の罠」の2編から成る。
キューバ危機に手こずるケネディ大統領時代のアメリカが用意した、梅毒に酷似した培養菌を陰部に秘めた、二人の男女の部隊。
それが性病部隊だ。キューバには医療品が少ないことから、性行為から培養菌を伝染させて、アメリカ側を有利にさせるというとんでもない作戦の命運を握る2人は「俺たちは意志を持たない人間爆弾なんだ!人間が作り出した最も汚らわしい性病爆弾なんだ!」と悩み、格闘しながらも、作戦を次々と成功させていく。
しかしアメリカは彼らに対してもあまりに非情だった。ついに怒りを爆発させた2人はあまりに絶望的な状況の中、決死の逃亡を試みるが・・・というように結構真面目に面白い第一話、全米で熱狂的な人気を持つ天才ロックシンガーのボブ・コッカーをフューチャーした小池一夫のロックスピリットが堪能できる熱い第2話とも必読。

 

ぶれいボーイ
(芳谷圭児/小池一夫)

今日も元気に無礼無事!無礼でイナセな高校教師である主人公は毎日ちゃらちゃらした女子生徒を見つけては時と場所を選ばず「せっかーん!」と叫びながら尻叩きを始める爽やか熱血教師、否、はっきりいってただの変態なのだが異様な爽やかさを誇るのがポイント。
ラスト付近では不良生徒とのスポーツ対決をふんどし一丁で制し、ついでに女子生徒を1人押し倒すハッスルぶり。
全編を通じてとにかく行動が異常。
しかしストーリーの方は「ガッツ広場」という意味不明な言葉を残して中途半端なまま終了してしまった。
タイトルが小池一夫作品の中でもダントツのインパクトと馬鹿さ加減を誇る爽やかテイストのエロ劇画だ。  

実験人形ダミーオスカー
(叶精作/小池一夫)

もはや説明不要、エロ劇画史上に燦然と輝く金字塔である本作は天才人形師・渡胸(トキョウ)が産み出す限りなく女体に近い人形=ダミーとそれを私利私欲のために利用する人間たちのドラマをエロエロに描く。
二重人格の渡胸は普段は温厚でインポだが、もう一つの人格が現れるとも強気になり、イチモツのほうも金属バットのようなキングサイズに変貌、毎度相手の女性がジーザス!ウタマーロ!と虜になっていく。
そんなアホな設定にも関わらず、ストーリーは毎回凝っているしプロットもしっかりしており、読み物としても十二分に楽しめる。突拍子もない設定を本格的な劇画で描いた時にしか生まれない異常な空気が読者の心を捉えて離さない。
エロ劇画の原点と言っていい不朽の名作であ〜る。

I飢男
(アイウエオボーイ)
(池上遼一/小池一夫)


カバーに装弾=小池一夫・発射=池上遼一と明記され、いつになく気合いの入った名コンビが産み出した男気エロ劇画。
ひょんなことから命を狙われることになってしまう主人公、アイウエオボーイ。その逃亡の道中に関わった女がみんな命を放り投げて主人公のために死んでいく、幾度も愛を失い続ける男、それが愛飢男(Iと愛もかけてるのね(笑))=アイウエオボーイたる所以だ。
1巻から6巻まで続くストーリーはアメリカ編、日本編ときて突然逃殺行などに変更し、数字の代わりにアイウエオを用いた巻数も「オ」で収まらず「カ」まで行ってしまっているところに男気を感じずにいられない。
内容以前に小池一夫節が十分に堪能できる希有な一作だ。おまけにストーリーも未完だったりする。

孫悟空
(小島剛夕/小池一夫)

実は最高傑作かもしれない小池一夫節全開の名作。
ぜか全員関西弁、三蔵法師はおやっさんと呼ばれている小池版「孫悟空」。一番の見所は悟空の苦労をよそに、水〜!飯〜!女〜!と我が儘言いたい放題、酒池肉林を繰り返し、女を抱きまくる極悪エロ三蔵法師
三蔵法師が道中を妨げる敵の女たちを次々と手込めにしてる間に不思議と事件が解決していくストーリーは結構面白かったりする。はっきりいって酷い目に会いつつも全く懲りずに暴走する彼次第で話のおもしろさが左右するほど彼の存在感は圧倒的だ。
ついでに猪八戒、沙悟浄たちも意志が弱く女にだらしない。呆れる悟空が脱走、観音様にエロを教育されたりする一幕も。冷静に考えれば一番やりたい放題なのは三蔵法師ではなく、彼を操る小池一夫
世間での評価は全然低い、というかこんな内容だとは誰も思っていないであろう隠れた逸品である。

 

 

THE レイプマン
(みやわきしんたろう/愛崎けい子)

普段は女子校の先生を勤める主人公の副業が不動産屋のおやじと営むレイプ屋稼業
依頼を受けたターゲットは確実にレイプしてくる凄棒の男だ。時にはライバルのレイプ屋(何故か女・鉄製の男根を使用)を犯してからターゲットをレイプ(ライバルのレイプ屋まで犯す必要はないのだが)、ゴルゴみたいな狙撃屋に狙われつつレイプ、時にはレイプ後に恋愛の本を投げつけ、愛について説教まで始めるサービス精神まで兼ね備えるインテリジェンス溢れる仕事人だ。さらにヨコハチ∞、44マグナム、秘技ハーケンクロスなどの必殺技でターゲットを昇天させることも常々忘れないマメな男でもある。
不動産屋のおっさんとレイプマンの粋な会話や、毎回のプロット、ストーリーもレベルが高い。
先日、復刻版も登場した。ちなみに原作の愛崎けい子は男性。

女犯坊
(ふくしま政美/滝沢解)

近年の太田出版から「聖マッスル」「聖徳太子」「ローマの星」などふくしま政美の本がずいぶん復刻したが、欲求不満で成仏できない人妻の霊を見事に昇天させる第1話から衝撃的な、エロ劇画の極北ともいえる作品がこれ。
女犯経に基づき、次々と難エロ事件を鎮めていく謎の僧侶・女犯坊。修行僧たちがイチモツを鍛えるシーンで「まだじゃ、まだ出してはならあぬ!」文字通りしごかれる彼らの図はトラウマになりそうな迫力だ
太田出版からの復刻はぶっとい愛蔵版3冊に及ぶが、結構グロい描写が多いのが難点か。ちなみに原作の滝沢解は小池一夫の次に要注意の名エロ劇画原作者。川崎三枝子と組んでスケ番・ロック系エロ劇画(何だそりゃ)「炎のクイーン」など幾つかの名エロ劇画を生みだした。

悪の華
(上村一夫/岡崎秀生)

70年代を代表する名作「同棲時代」の上村一夫お得意の情念漫画の集大成であり、かの雑誌「エロトピア」に連載された漫画史上に残る暗黒エロ劇画
代々、政界までも手中に収めて暗躍してきた黒髪流華道・第17代目にあたる花矢木蘭之助は生きた美女を花として楽しむ為、800人もの犠牲者を出し、さらには女性器(!)を切り取り、ホルマリン漬けにしてコレクションしているというキワモノ人間。調教され、性の奴隷とされながら"悪の華"として目覚めていく美しいヒロイン小百合、そんな彼女を助け出そうとして邸に潜入するも拉致られ、女装趣味の快楽(ロマン・ポランスキーもびっくり(笑))に眼覚めてしまい苦悩する悲劇の元婚約者、蘭之助の子供を身篭るなど物語の鍵を握るとてつもなく醜い女・菊野、文字どおり外でとなって生活する乱之助の前妻・茜、菊野の赤ん坊を平然と殺す蘭之助の子供たち。
"悪"と"エロス"と"情念"がうずまく、倒錯した悪夢のような世界!全てが暴露され、邸が炎に包まれる最終回も圧巻だ。

 
 
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